パブの名前と看板について/なぜパブは似たような名前が多いのか?


都心から田舎まで、至る所にあるイギリスのパブ。何十軒も見るうちに、パブの名前って似たようなものが多いことに気づきました。なんなら、同じ名前のパブが何件もあったりします。
あと、看板が大きくて分かりやすい。


このパブの大きな看板や、名前についての背景が少し面白かったので書いてみます。



まず、看板が大きく分かりやすい理由。

昔からパブは労働者階級の人たちに愛されていました。しかし、彼らの中には文字が読めない人も少なくなかった。そこで、住民全員が識別できて親しみやすいパブとするため、分かりやすいアイコン的な看板を掲げるようになった。


比較的新しいパブの看板は、控えめなものも見かけますが、基本的には印象的で大きく、人の顔や動物・モノがデーーーン!と描かれたもの。時には立体的なモチーフなどを飾った看板も見られます。



さて、看板のつぎは名前です。
私が特にこれまでよく見かけたシリーズの、それぞれの由来を見てみましょう。



〇〇’s Inn
ナンチャラ・イン という名前。この名前はパブの歴史と関わりがあります。


「イン」は、もともと宿屋につけられる名前。海外でよく見る「ホリデーイン」というホテルもそうですね。パブは、かつては飲み屋だけでなく宿の機能を兼ねていたところも多かったので、その名残で「イン」が付いているらしい。




〇〇 Arms 

Armsというのは、「紋章」という意味になります。かつての王族・貴族の紋章を元にした名前が多いようです。

「〇〇の紋章(〇〇 Arms)」というシンプルな名前も良く見ますが、紋章の模様をモチーフにした名前も多い。たとえば、紋章によく描かれている動物が名前の一部になったりもします。


例として、「Blue Boar(青いブタ)」はオックスフォード伯爵の紋章に描かれたブタが元になっています。




Duke/Prince/Princess of 〇〇

Dukeは男爵、Princeは王子、Princessは姫。「〇〇(場所)の男爵/王子/姫」といった意味になります。

王室や階級社会が重んじられてきた、いかにもイギリスらしい名前ですね。その土地を治めていた人々をモチーフにした名前で、例えば「Princess of Wales」(ウェールズの王子)は、エドワード7世(かつてのイギリス国王)の代名詞らしいです。




Three 〇〇s
「3つの〇〇」という名前。〇〇のところには、モノや動物が当てはまります。例えば靴とか、やかんとか、矢とか。


この「3つの〇〇」の由来は、かつての労働組合や職業別組合(ギルド)の紋章が元になっているらしいです。多くの紋章に「3つの」何かが描かれていたらしい。紋章が元になっているので、種類としては1つ目の「Arms」と同類としてもいいかもしれない。


例えばこれは、Cordwainers(ヤギ革)職人のギルドの紋章。ヤギが3頭。



そういえば、ハリーポッターが好きな人なら覚えているかもしれませんが、ホグズミードにある老舗パブの名前が「三本の箒(Three Broomsticks)」でしたね。バタービールが飲めるとこです。
ここも、実は実際にあるパブの名前に近づけた、お洒落なネーミングだったんですね。素敵!



この他にも、文学や伝説を元にした名前、スポーツの名前など、いろいろシリーズがあるみたいです。「わかりやすく覚えやすい名前」をキーワードに、いろいろ派生していったんでしょうか。


イギリスでパブを見かけたら、名前をチラッとみてみたり、個性的な看板を見上げてみてください。今回紹介した名前に当てはまるパブなら、それなりに歴史が長いパブだと思います。



ロンドンは、まだ故郷ではない

2018年からロンドンで単身赴任している 20代後半サラリーウーマンです。 住んでみたら意外とよかったロンドンでの生活、仕事、そしてワインのこと。

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